「2666」ロベルト・ボラーニョ著

ハードカバー2段組で800ページ以上、価格約7000円という大著を買った。
2003年に50歳で死去したスペインの作家の遺作である。

まだ読み始めたばかりだが、帯にも書いてあるボードレールによるエピグラフ「倦怠の砂漠のなかの恐怖のオアシス」そのままに、倦怠と狂気を感じさせる描写のあちこちに残酷さと暴力に満ちた地金が顔をのぞかせる。
持ち歩けないほどの分厚さだが、訳文もこなれていて読みやすい。舞台は現代のヨーロッパと南米。20世紀末の世界を描いていて日本人が読んでも同時代の文学という感じがする。思いがけず「リング」と思われる映画のエピソード織り込まれていたり。

.

.

.

このイラストはあるソーシャルゲームために描いたものだが、なんだかこの小説の雰囲気に近い気がするので。

.

Skull

| | コメント (135) | トラックバック (0)

書籍のイラスト

岩崎書店から刊行される「痛快!逆転!日本の合戦3 敵はゾンビか?死を怖れない集団」という本のイラストを描きました。

タイトルがすごいのですが、内容は小中学生向けの歴史のエピソード集です。

中の挿絵も担当してます。
ほとんど自由にやらせてもらったので、慣れぬ時代物だったけれども、楽しい仕事でした。子供向きにも関わらず、血しぶきとかも描いちゃっています。

2月に刊行される予定ですので、もし書店で見かけたら手にとってご覧下さい。

| | コメント (13) | トラックバック (0)

「芥川龍之介怪談傑作選」と「蝿の王」

ちくま文庫から出ている芥川龍之介の怪談小説やエッセイばかり集めた短編集を読んだ。
実は芥川の小説をちゃんと読んだのはこれが始めて。もちろん教科書とかでは読んでいるが。

芥川が怪談好きというのは恥ずかしながら初めて知った。エッセイの中でポオやH.G.ウェルズに言及していて、今生きていたらSFやホラーを好んで読んだろうなと察せられるほどだ。
小説は題材としてはドッペルゲンガーとか妖術使などわりとオーソドックスなストーリーの物が多いが、場面の描写が非常に映像的でモダンホラーにも通じる物がある。

例えば「妖婆」という短編で何か目に見えない得体の知れない物に纏わり付かれているという主人公が電車に乗る場面。
閑散とした車内でつり革が電車の動きにつれて揺れている中で、主人公の前のつり革だけ何かがつかんでいるように動かないなんていう描写はホラー映画に出てきそうな感じだ。
ウェルズ原作の「透明人間」の映画の中に同じような場面があったような気がする。ひょっとしたら芥川も見ていてパクッたのかな。

もう1冊前から読みたいと思っていたゴールディングの「蝿の王」を本屋で見つけて購入した。
というのもよく読むスティーヴン・キングの著作がこの「蝿の王」と比較されて語られることが多く、作品の中でも言及されていることがあったので、ずっと気になっていたのだ。
その一場面を絵にした。

「蝿の王」とサイモン。

Lord_of_the_flies_2

| | コメント (4) | トラックバック (0)

深海のYrr (ハヤカワ文庫)  フランク・シェッツィング (著) 北川和代 (訳)

「しんかいのいーる」と読む。結構分厚い文庫で上中下の3分冊、読みでがある。
正直言って小説としての出来は傑作というわけではない。
所々冗漫な部分があるし、大勢の登場人物を捌ききれてなくて、訳文のせいもあるのだが、会話など誰が言ったセリフか分からなくなってしまう処もある。

でもそれを措いても、設定、プロットのアイデアが素晴らしく、実に楽しく読めた。

題名から想像できるかも知れないが、深海生物と人類の戦いを描いた作品である。
その深海生物の攻撃法というのが、とてもユニーク。
宇宙人のように未知のテクノロジーを使うわけではない。論理的にもかなった方法で、しかも破壊力抜群。人類を滅亡寸前に追い詰める。

どうやら映画化が進んでいるようだが、脚本がうまくいけば、面白いSFディザスタームーヴィーになるかも。

少し前に読んだデニス・ルヘインの「シャッター・アイランド」も映画化されたようで、このあいだ予告編を見た。
こちらは(ちょっとネタバレになるかもしれないが)大きなどんでん返しのある小説で、これを名手マーティン・スコセッシ監督がどう料理するか楽しみ。
.
.
.
.
今年の初めにやったグループ展のメンバー+αで来年またやることになって、昨日はその打ち合わせと飲み会。けっこう飲みました。
これは今年のに出した作品。来年のはネタ絵が多くなりそう。

Photo_2

| | コメント (6) | トラックバック (0)

文化芸術展

文化芸術展という催しに出品します。
場所はこちら、4月1日からです。

http://www.robinsons.co.jp/odawara.html

その準備で連休はどこにも行かずじまい。映画にも行けなかった。
で、夜中にスカパーを見てたら「モスラ」(第一作)と「リービング・ラスベガス」をやっていた。
さてどちらを見るか?

酒を飲みながらという事で、「リービング・ラスベガス」の方を見ることにする。

ニコラス・ケイジにつられてこちらもピッチが上がり途中で沈没。まあ時間も遅かったしね。

この前のグループ展に出した作品。これも前回のと同様、ちょっと色が飛び気味。撮り直したほうがいいかな。キャンソン紙にアクリルガッシュ、A2サイズです。

Nc

| | コメント (8) | トラックバック (0)

今年最後に読んだ本 「百年の誤読」岡野博文・豊崎由美 著

ちくま文庫には「本に関する本」が多いと思う。好きなジャンルなのでちょくちょく買うが、これもその手の一冊。20世紀の100年間、国内でベストセラーになった本を対談形式で批評していくというもの。
最近のベストセラーというと内容スカスカでどうして売れたのか分からんものが多い。
そういうものは、もちろんズバズバと切り捨てている。でも評価する部分ちょっとでもがあれば、きちんと評価するところに単なる悪口言い放題ではない、この二人の本に対する愛情がみてとれた。

面白いのは、明治大正の物も最近の作品に対するのと同じように俎上に載せている点で、つまり「金色夜叉」から「DEEP LOVE 第一部 アユの物語」まで同列に並べて批評しているといところだ。

古典といわれる作品もかなり手厳しく扱われている。例えば川端康成の「雪国」は「ただの色惚け?『雪国』」という表題で、登場人物のとっぴな言動を笑っているし、「智恵子抄」なんて高村光太郎の人間性に関してボロカスな物言いをしている。

ひとつ分かったのは、おバカなベストセラー本というのは明治時代からあったことはあった、ただ最近はその割合がやたら多いということ。
作者の言によると1960年を境にフォッサマグナ的な変化があって「読書傾向が『だらしな派』に切り替わって」しまったらしい。

一番驚いたのは、これはまったく自分の思い込みだったのだが、田山花袋の「蒲団」の内容。
自然主義の小説の代表作として教科書には必ず載っていて、テストのために田山花袋=蒲団、志賀直哉=城の崎にて、というふうに題名だけは暗記していた。ただ内容については自然主義ということで、なんとなく蒲団にも苦労するような貧乏話なのかなと漠然と思っていただけだっだが・・全然違ったのですね。
これ一種の私小説で、以下本文を・・・

豊崎 
「え、なんで?可愛いオヤジじゃん。『蒲団』いいじゃないですか。家庭生活に倦んでいて、「ああ、恋愛したい」なんてほざいている中年作家のところに女弟子がやってくる。
で、ときめいちゃうんだけど、その娘は年相応の男子と恋に落ちる。悶々とするオレ、恋愛の邪魔をしたいオレ、女弟子が故郷に連れ戻されれば彼女が使っていた蒲団に顔をうずめて泣くオレ・・そんな話(笑)。」

中年ストーカーおやじの話じゃん!授業で内容にふれなかったわけだ。

クロッキー。近くのシネコンで描いたもの。

P02

P01

| | コメント (2) | トラックバック (0)

ゲットスマート

コメディだが、どちらかと言うとゲラゲラと言うよりクスクス、ニヤニヤという笑いを誘うタイプの映画。

だいたいチビでスクエアでオタクっぽいスティーブ・カレルが、まじめな顔してスパイ・エージェントをやっているだけでおかしいし、加えて相手役のアン・ハサウェイのコメディエンヌぶりもまた素晴らしい。
初めて組んだミッションでモスクワに向かう飛行機の中で、夫婦のふりをするために細かい設定をつめているうちに(妻は仕事が忙しいので子作りは休憩中とか)、本当の夫婦喧嘩になってしまう場面など、ありがちだが笑ってしまった。
この後オレが映画中で一番笑ったシーンと(英語でアレをすることをsqueeze the lemonと言う事をはじめて知った。けどsqueeze the lemon って言い得て妙だ)アクションシーンをはさんで、口げんかは続くのだが、要するにこの二人のかけあいというかコンビネーションが非常にうまくいっているのがこの映画の第一の魅力だろう。

基本的にシチュエーションコメディではなくてドタバタなのだろうが、例えば「オースティン・パワーズ」なんかに比べると、出演者のテンションが一様に低い。小ネタをちょこちょこ繰り出してくる感じ。
超有名コメディアン(個性派俳優といった方がいいかな、日本で言えばたけしクラス)がカメオ出演しているのだが、そのシーンもかぶり物姿で愚痴をぶつぶつ言っているだけというもの。でもそれが妙に面白いのだ。

そのかわりアクションシーンはガチで結構大掛かりにやっている。この映画スパイ物としてのプロットは意外にしっかり作られていて、ストーリー展開をギャグでごまかすということをあまりしていない。主人公がもと分析官であるという伏線もあとのほうでうまく生かされたりしている。

大統領役がジェームズ・カーンだとしばらく気がつかなかった。なんかいい爺さんになったなぁ。

電車と街角でクロッキー。
下のは歌舞伎町の広場でとなりに座っていたオッサン。

Z03

Z05

| | コメント (1) | トラックバック (0)

あえて「僧正殺人事件」を読んでみる

いわゆる名作といわれる古典的な作品は、若い頃は集中して読んだが、ある年齢以上になってからはあんまり読んでいない。
名前は良く知っていても読んだことのない本って沢山あるもんなぁ。

例えば川端康成は一冊も読んだことが無いし、芥川龍之介も教科書以外では読んだ覚えがない。
夏目漱石はほとんど読んだが、「坊つちやん」と「吾輩は猫である」は読んでいない。
外国のもので言えば、「カラマゾーフの兄弟」は読んだが、「罪と罰」は読んでいないし、ヘミングウェイは確か中学の時くらいに「誰がために鐘は鳴る」を途中で投げ出して以来読んでいない。

だけど、長い間読みつがれてきた名作と呼ばれる作品は、文学的な価値はもちろん、通俗的な意味でも結構面白いということを、去年初めて読んだ谷崎潤一郎の「細雪」で気が付かされ、それ以来ちょくちょくその手のものを読んでいる。

では、エンタテインメント系の古典的名作はどうだろうか?
で、「僧正殺人事件」を読んでみた。ヴァン・ダインを読むのは初めて。
1929年刊行、文中に「戦後のアメリカ云々・・・」と出てくるが、それが第一次世界大戦のことだったりする。

意外だったのはこれが、大向こうをうならすようなトリックを売り物にした小説ではなく、どちらかというとサスペンスだったこと。
犯人は一種のサイコキラーで、それがまともそうに見える登場人物の中に紛れ込んでいる。
探偵も証拠やアリバイ調べ以外にも、現在で言うプロファイリングの手法で犯人に迫っていく。
さすがに探偵も警察もややのんびりムードだが、スリリングな展開は今読んでも充分楽しめると思う。

凶行の場面の描写がないので、犯人の印象は読後も穏やかな人物のままだが、その知性といい行動力といいハンニバル・レクター博士の原型のような怪物だ。

関係ないが最近描いたモンスターを。
時々発作的にこの手の絵が描きたくなる。

130

| | コメント (2) | トラックバック (0)

「愚か者死すべし」 原 リョウ 著

今年最後に読んだ本。

私立探偵沢崎を主人公とするこのシリーズは、レイモンド・チャンドラー系のハードボイルド小説の雰囲気をそのままに新宿を舞台にして展開するもの。
ちょっと修辞過多の皮肉のきいた文章と実際に聞いたら背筋がぞくっとするようなきざなセリフが特徴です。
まあそれが好きで自分も何冊か読んでいるのだが。
ムードだけで持っていくわけで無く、ストーリーも2転3転で推理小説としての面白さもある。

ただ今回特に思ったが主人公沢崎の人柄が立派過ぎないか?

確かにチャンドラーは主人公にすべき探偵について次のように書いている(「簡単な殺人法」より)

「だが、こうした卑しい街路を、一人の男が歩いていかねばならぬのである。
彼自身は卑しくも無ければ、汚れても、臆してもいない。この種の小説における探偵とは、そんな男でなくてはならないのだ。」

けれどあそこまで高潔で自分自身に厳しくある必要はないと思うのだが。

「グロテスク」を気に入ってから、桐野夏生をちょくちょく読んでいて今年読んだ中では「ダーク」が印象に残った。
こちらも新宿を舞台にしたシリーズ物の私立探偵小説だが主人公が「愚か者死すべし」とは正反対。
まず女性でそれから「卑しい街路」の色に思いっきり染まっている。実際後半はだんだん犯罪小説っぽくなってくる。
主人公の感情の赴くままにストーリーがあらぬ方向に進んでいくのがとてもスリリングだ。

翻訳ものではピーター・ストラウブの「ヘルファイア・クラブ」がよかった。
いちおう異常犯罪者物のサスペンス小説ということになるのだろうが、ある有名な小説家の作品にまつわる謎が絡んできたり、けっこうなアクションもあって一筋縄ではいかない小説だ。
中盤からは緊張感を保ったままいっきにラストまで突っ走り、最後にはすべてきれいに収まるのが見事。
主人公の女性が更年期障害に悩まされているというのも変わった設定で「ホットフラッシュ」という言葉を始めて知った。

街角でクロッキー

P05_2

M03

| | コメント (3) | トラックバック (0)

「封印作品の闇」 安藤健二 著

世の中には報道されないが故に知られていないことが沢山あるのだなあ、というのが読んだ感想。
もちろんこの本に書かれていることは一般社会的にはまったく重要ではないことなので、知られていなくともかまわないのだが、少なくても自分にとってはとても興味のある内容だった。

この本では「キャンディ・キャンディ」「ジャングル黒べえ」「オバケのQ太郎」という3作の漫画と特撮ヒーロー物「サンダーマスク」が取り上げられている。

ある年齢以上にはおなじみの作品だ。

このすべてが現在では新たに出版、あるいは放送できないという状態にあり、どうしてそういうことになってしまったかという顛末を検証していくのが本書の内容である。

このうち「キャンディ・キャンディ」についての原作者といがらしゆみこ氏の間で裁判ざたになっているというの記事をどこかで読んだことがあるが他はまったく知らなかった。

とくにオバQには驚いた。

考えてみればキャラクタービジネス全盛の昨今、漫画はともかく広告あるいはフィギュアやおもちゃという形でもまったくオバQを見かけないというのは奇妙なことだ。
いわばドラえもんの兄貴筋にあたり、シンプルでかわいらしい造形はおそらくドラえもん以上、バケラッタのO次郎はじめ魅力的な仲間がそろっているという点でも非常に強力なキャラクターだろう。

そのオバQがまったく見かけられなくなった理由については数行で書くことができるが、やっぱり興味のある人は本書を読んでもらうのがスジだろう。
ただひとつ言えばオバQの場合は当事者の気持ちを尊重するような形で封印されていることが救いと言えば救いかな。

他にも本書で初めて知って驚いたことがいくつかあるが、例えばまだ記憶に新しい「ちびくろさんぼ」がいっせいに廃刊になった件、
その原動力になった「黒人差別をなくす会」があんな団体だったとは・・・・

これは平塚の喫茶店でスケッチ。

M09

M10

| | コメント (2) | トラックバック (1)